遠回りし過ぎて気づいたら48歳。
初めまして。ふじぜん呉服店の吉原です。
先日、１０年ぶりに会った同業者。私より10歳ぐらい年上の方ですが、変わらず小売店を続けているようで”ホッ”としました。
京都で出会い二人でコーヒーを飲みにいきましたが、やはり思い出すのは売れていた時の事。残念ですが最近、売れなくなったのは現実です。
ヤル気満々で丁稚奉公から帰ってきたが…。
平成３年に帰郷して実家の後を継いでからは失敗ばかり。父（社長）との喧嘩が絶えずに独立。失敗し続けどん底に落ちてからのこれまでの歩みをブログにしてみました。
船出市で調子に乗り過ぎた。
その時代は後継が帰ってくると船出市や希望展として記念の展示会を開催した呉服店も多いはずです。最強の企画展。羽織袴を着てお客様を出迎えるだけで売れていく。
家族経営だった私の店でも4日間で6000万円の売上。
20歳前半の私には驚きだけしか残らなかった。
７割がローン契約での販売だったので１週間後には4000万円程の入金。
どんどん鼻が高くなり調子に乗る自分。
今思うとダメ人間の始まりでしたね。
それから２年後には「寿展」
寿展でまた調子に乗った。
私が結婚の挨拶する展示会。私と家内は着物を着てご挨拶。
これが4日で4000万円。
またまた調子に乗ってしまった。
呉服屋って儲かるやん。と勘違いしている自分。
帳簿を見ていなかったので経費も分からずに売上ばかり見ていました。
展示会後の売上はゼロに近く両親は焦っていましたね。
売上が減り始めると社内で親子ゲンカが絶えなくなり、パチンコ三昧。
朝から晩までパチンコ店に入り浸り。
これでは売上どころかお客様へのお伺いもできず、どんどん離れていってしまいました。情けないと思いながらも止められない依存症。
所持金が底をつくまで抜け出せない。恐ろしい事です。
喧嘩で独立
パチンコ三昧が親にも嫁にもバレ、最後には父親と大喧嘩をして独立。
結局、家内はパートにいき私は一人で始める事を決意しましたが、後悔と不安しかありませんでした。少ないお客さんだけでどうしよう？パチンコをしていた事で久々に会うお客さんは迎えてくれるのか？売上ができなかったらどうしよう？
偉そうに言いながら独立したものの、父がやっていた企画展と訪問販売で食いつなぎ。
思った売上ができるわけがありませんよね。
問屋に見放される
かなり精神的にキツかった日々。売上ができなかったら問屋さんも商品を貸してくれません。元々、在庫がほとんどなかった店ですから委託に頼り展示会をやっていましたから…。
終いには問屋さんからも見放され路頭に迷ったな〜。
サラリーマンになる事も考えましたが、すでに40歳間近のお坊ちゃんは雇ってくれると事もなさそうと思い、未知の世界でしたがインターネットの一発逆転をねらい始めました。
インターネット販売で挫折。
４０歳でグーグルすら知らず、ファイルも何のことか分からない自分。
知り合いにネットで売上を作っている人がいたので、毎日のように押しかけました。
あの時は人の迷惑を考えず夜遅くにでも教えてもらいにいきましたよ。
とにかく崖っぷち。やるしかなかったんです。
着物は在庫がなければネット販売できないと思っていましたから、他の商品を差がないといけません。
そこで「作務衣」を販売することを決め、HTMLタグの本を購入してカート付きのホームページを作りました。
独学でしたが半年で初めての注文。
朝起きたら注文は入っていたのでビックリしたのと嬉しいのとで大はしゃぎ。
ネットの威力を少し感じましたが、これで終わり（涙）
当分、注文がくることはなくパソコンに向かう日々でしたが、始めてから一年後には片手ぐらいは売れるようになりました。
しかし売れるようになると在庫も必要となり、売上を上げるためには露出度を高める為にSEO対策の強化。
そんなもん素人にできるものじゃなかった。
楽天にもヤフーショッピングにも誘われたが、高額のために諦め独自サイトで勝負しましたが、またもや壁にブチ当たりました。
価格競争にも破れ撃沈。サイトを手放す事となりました。
悉皆で再出発
でもインターネットの威力はスゴイ！
着物の知識はある方だと思っていたので、悉皆で再チャレンジ！
もちろんインターネットでの集客。
中々、既存のお客さんには言い出せなくて…。
この時はまだプライドが捨てきれなかったんです。
坊ちゃん育ちはダメでした。
サイト運営のプロとの出会い。
しかし自分でサイト運営するのは難しい。
時間がどれだけあっても足らない状況でしたので、どうするか悩んでいましたが、警戒心の強い私が、初めて運営を依頼することにしました。
違う目線からのアドバイスはとても助かりました。
サイトに対する考え方が間違っていた事を確信。デジタルのスピードにはついていく事すらできていなかった私でした。
サイトの構築から解放され時間ができたので悉皆のお勉強。
簡単に考えていた事を実感。
販売とは全く違う感覚。知識もかなり必要で昔に売っていた事を反省するばかりです。
口八丁手八丁ってこの事。
ズバリ私。
悉皆のプロとの出会い
これではヤバイと思い勉強しなければと焦りましたが、仕立て・シミ・染め・生地などを教えてくれる所もなく本を買って勉強する始末。
そこで出会った悉皆メーカーからの救いの手。
京都ですが、様々な職人さんと合わせていただき勉強させていただくことができました。すごくありがたい。
時間はかかりましたが、これでお客様に納得いただけるアドバイスができるようになり、今に至ります。まだまだ勉強中ですが、自分のやっていくことがハッキリと見え楽しく毎日を過ごせるようになったのが、着物の分野で続けられる自信となりました。
アナログとデジタルのバランスが大切
一時期はサイトの更新ばかりで既存のお客様を数年もの間、ほったらかしでした。
以前はネットで一発逆転を企んでいたのですが、ダメだと言う事を気づきコツコツお伺いに回っています。
悉皆の需要は少ないと思いますので、ご相談があれば県内は一人で伺っています。
着物から疎遠になっているからこそ困っている方が多いのには実感しています。
最近では紹介もいただけるようになり、もう少しで安定する予感。
失敗ばかりで遠回りしましたが、やっと居場所と目指すところが見つかったような気がします。
小さい呉服店なら必ず生き残れると確信しています。
ニッチな部分を伸ばし大手に負けず頑張リましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
店主 吉原ひとし
